人に期待してしまう。
「こう言ってほしい」「きっとこうしてくれるはず」と思ってしまう。
あるいは、結果に期待してしまう。
「この願いはきっと叶うはず」と信じたい。
でも現実は、思ったようにいかないことの方が多くて、
がっかりしたり、傷ついたり、心がざわついたりする。
2020年に書いた「期待はずれでがっかりすることが多い人へ」という記事には、今もアクセスが多く、
それだけ “期待と失望のループ” に苦しんでいる人が多いのだと思います。
私自身、IFS(内的家族システム療法)を学んだことで、
なぜ期待してしまうのか、
がっかりの裏で何が起きているのか、
をより深く理解できるようになりました。
今日はその気づきを、分かりやすくシェアしてみたいと思います。
期待が膨らむとき、内側で起きていること
IFSでは、私たちの心の中には “役割を持ったさまざまなパーツ” がいると考えます。
期待する私、
落ち込む私、
相手を責めたくなる私。
どれも勝手に暴れているのではなく、
「傷つかないように」「安心したい」
という意図で動いてくれている守りのパーツです。
期待するパーツも、実はあなたを守ろうとしている存在です。
たとえば、
-前向きでいたい
-信じたい
-良い結果をイメージしたい
そんな役割を担っていることがあります。
でも守りのパーツには必ず “目的” があります。
目的があるということは、同時に
「期待どおりにならなかったらどうしよう」
という“緊張” も伴います。
その奥には、多くの場合、
過去に失望した経験を抱えるパーツがいます。
期待が強くなるほど、心の内側では微かな緊張が生まれています。
がっかりの裏側で働くパーツたち
期待が外れたとき、あなたの中ではどんな反応が起きますか?
落ち込みすぎて動けなくなったり、
逆に、落ち込みを感じないように暴飲暴食や買い物に走ったり。
これらの行動も、あなたを守るためのパーツの働きです。
落ち込みの奥には、
「また傷ついた」
「自分は大切にされない」
という痛みを抱えるパーツがいます。
暴飲暴食や気晴らしをするパーツは、
その痛みに直面しないように守ろうとしてくれているのです。
「もう期待しない」とふたをする私
期待してがっかりする経験を重ねると、
“もう期待しないようにしよう” と心にふたをすることがあります。
「どうせまた傷つくから」
「期待しなければ、がっかりしないから」
これも守りのパーツの働きです。
期待する私も、期待しない私も、
どちらも「もう二度とあんな思いをしたくない」という同じ願いから動いています。
セルフという “アジェンダを持たない場所”
前回の記事では「期待ではなく信頼へ」というお話をしました。
でも今ならもっと明確に言えます。
信頼はパーツががんばってするものではないということです。
期待には目的があります。
「こうなってほしい」という方向性があるから、緊張が生まれる。
一方、IFSでいうセルフの状態には目的がありません。
「こうであってほしい」「こう進めたい」という力みがなく、
静かで、広がりがあり、相手や状況をそのまま見ていられる場所です。
セラピーでも同じで、
私が「こう進めたい」
「こんなセッションであってほしい」と思いすぎている時、
それは私自身のパーツからのアジェンダでした。
セルフが前に出てくると、
自然とその緊張がゆるみ、
“信頼できる感覚” が広がってきます。
信頼しようと「がんばる」必要はないのです。
期待しやすい私と、優しく関わるために
ではどうすれば、期待とがっかりのループから少し自由になれるでしょうか?
まずは、
「あ、期待しているんだな」
と気づくだけでOKです。
あなたの期待にはどんなエネルギーがありますか?
・ワクワク?
・そわそわ?
・緊張?
・不安?
ただそれに気づき、
「期待しているパーツ」にそっと注意を向けてみます。
そのパーツは、何からあなたを守ろうとしているのでしょうか。
その奥に、
がっかりした小さな自分、
期待が裏切られた経験を持つパーツがいれば、
ただ「そこにいるんだね」と認めてあげるだけで十分です。
気持ちが少しゆるんだり、
スペースが生まれたように感じるかもしれません。
そのスペースこそ、
“信頼” や “委ねる感覚” の始まりです。
期待と信頼の間で揺れるあなたへ
期待する私も、期待しないようにがんばる私も、
すべてあなたを守るために働いている大切なパーツです。
うまくいかない日があっても大丈夫。
どれもあなたの心の自然な働きです。
そして、その背景には常に、
静かで落ち着いたセルフという場所があります。
結果をコントロールしようとしなくても、
相手の気持ちを読みすぎなくても、
安心感があるスペース。
もし必要だと感じたら、
安全な場所で、一緒にパーツを見ていくセッションも役に立ちます。
あなたを守ろうとしているパーツたちと繋がり対話することで、
自然と心に安心と信頼のスペースが生まれていきます。
IFSセッションに興味がある方は、ぜひお気軽にご相談くださいね。
